士業は依頼者に口コミを頼んでいい?守秘義務と会の規程を踏まえた頼み方

士業は依頼者に口コミを頼んでいい?守秘義務と会の規程を踏まえた頼み方

結論から書きます。士業事務所が依頼者に口コミをお願いすること自体は、禁止されていません。ただし他の業種と違い、Googleのポリシーに加えて、守秘義務と所属会の広告規程という2つの制約が重なります。頼み方と、そのあとの扱いに手順が要ります。

  • 士業に特有の3つの壁と、それぞれの根拠となる条文
  • 守秘義務に触れずに頼むための文面と、渡すタイミング
  • 口コミが集まりにくい前提で、何を代わりの材料にするか

「依頼者に口コミを頼んでいいのか分からない」という相談を、士業の先生からよく受けます。飲食店や美容室の記事を読んでも、守秘義務や会の規程には触れていないので、自分の事務所に当てはめられません。

この記事では、司法書士、税理士、社会保険労務士、行政書士の4士業について、根拠となる条文を示しながら、依頼していい範囲と具体的な文面を整理します。法令と規程は公的な資料で確認しました(2026年9月16日時点)。個別の判断は所属会に確認してください。

士業に特有の3つの壁

壁1:依頼者が書きにくい

相続、債務整理、離婚、会社の労務問題。士業が扱う案件は、依頼したこと自体を人に知られたくない性質のものが多くあります。満足していても、実名に近いアカウントで「相続の相談に乗ってもらいました」とは書きにくい。これは頼み方の問題ではなく、業務の性質です。

飲食店と同じ件数を目標にすると、無理が出ます。母数が少ない前提で設計してください。

壁2:守秘義務があり、依頼関係や案件を無断で公表できない

4士業には、それぞれの法律に守秘義務が定められています。依頼の内容はもちろん、誰が依頼者かという事実自体が、業務上知り得た秘密に当たり得ます。

士業守秘義務の根拠条文の趣旨
司法書士司法書士法24条正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない
税理士税理士法38条正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、または窃用してはならない
社会保険労務士社会保険労務士法21条正当な理由がなくて、その業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、または盗用してはならない
行政書士行政書士法12条正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならない

いずれも「正当な事由」「正当な理由」という留保が置かれています。秘密に触れない一般的な説明まで禁じられているわけではありません。ただし、本人の同意なく依頼関係や案件の内容を公表することは避けるべきです。集客のためという理由だけでは、この留保を満たすとは考えにくいためです。

壁3:所属会の広告規程がある

広告については、法律とは別に、所属する会の規程が適用されます。内容は会ごとに違いますが、依頼者や取扱案件の表示に条件を付けている例があります。

  • 大阪司法書士会の広告に関する規則は、依頼者を表示した広告と、受託中または過去に取り扱った案件を表示した広告を、依頼者の文書による同意がある場合を除いて禁止しています(3条8号・9号)
  • 名古屋税理士会の業務の広告に関する細則4条は、委嘱者の氏名や名称、現在または過去に取り扱った事案の表示を禁じ、委嘱者の書面による同意があるときを除くとしています。同様の細則は各税理士会が定めているため、条文の内容は自分の所属会で確認してください
  • 全国社会保険労務士会連合会の会則43条の4第3項は、誇大または虚偽の事項により相手方を欺くおそれがある方法での広告を禁じています
  • 行政書士職務基本規則17条は、不当な目的を意図し、または品位を損なうおそれのある広告宣伝を禁じ、ホームページやSNSによるものも含むと明記しています。あわせて、事実に合致しない内容、誤認または誤導のおそれのある内容、誇大な広告宣伝も各項で禁じています
ここを混同しない

これらの規程が扱っているのは、事務所が出す広告に依頼者や案件を載せる場合の話です。依頼者本人が自分の意思で投稿した口コミが、そのまま事務所の広告になるわけではありません。ただし、事務所が内容に関与すれば話は変わります。

Googleの共通ルールは、他の業種と同じ

Googleのポリシーは業種を問いません。見返りを渡す、評価や内容を指定する、良い評価をくれそうな人だけに声をかける、その場で書くよう求める。これらが禁止されている点は、士業でも同じです。

行為ごとの線引きはGoogle口コミの依頼はどこから違反?に、Googleのポリシーと景品表示法の両面から整理しました。まずそちらで基本を確認してください。

士業で追加される注意は2つです。ひとつは、依頼の場面で投稿内容を指定しないこと。「今回の相続の件について書いてください」と言えば、書く側はその内容を書きます。事務所が内容の決定に関与したと見られる余地が生まれます。もうひとつは、投稿された口コミを事務所のサイトに転載する場合、所属会の規程で同意が必要になる場合があることです。Googleマップ上の投稿は本来投稿者の表示ですが、事務所が内容に関与していれば話は変わりますし、サイトに載せた時点では事務所の広告になります。名古屋税理士会の細則6条のように、第三者が行う規程に抵触する表示への関与を禁じる規定もあります。

守秘義務に触れない頼み方

STEP
案内を常設にする

依頼用のリンクとQRコードは、ビジネスプロフィールの「クチコミを読む」から「クチコミを増やす」を開いて取得します(公式手順・QRコードの生成はパソコンのブラウザのみ)。これを完了報告の書面、請求書、事務所の受付に置きます。誰に渡すかを選ばない形にしておけば、良い評価をくれそうな人だけに声をかけることになりません。

口頭で頼む場合も、特定の依頼者だけに言うのではなく、手続きが終わった方に同じ案内をする運用にします。

STEP
案件に触れない言い方にする

「手続きを終えてのご感想を、差し支えない範囲でお聞かせください」。この一文で足ります。何について書くかは相手に委ねます。

避けたいのは「相続の件で満足いただけたら」「今回の登記について」といった言い方です。案件の種類をこちらから出すと、書く側もそれに沿って書きます。結果として、事務所が内容の決定に関与したと見られる余地が生まれます。

STEP
渡すタイミングを決める

手続きが完了し、書類を引き渡すときが自然です。相談の途中や、結果が出る前に頼むと、依頼者が断りにくい状況になります。

継続的な顧問契約であれば、区切りのタイミングで一度だけ案内する形にします。繰り返し頼むことはしません。

STEP
返信の型を先に用意する

投稿が入ってから文面を考えると、つい案件に触れてしまいます。依頼関係を肯定も否定もしない返信の型を、あらかじめ決めておいてください。

「この度はご投稿いただきありがとうございます。今後もご相談いただきやすい事務所であるよう努めてまいります」。この程度で十分です。

依頼するときの文面例

そのまま使える型を3つ挙げます。いずれも案件に触れず、評価も指定していません。

書面に添える場合
本件の手続きは以上で完了となります。もしよろしければ、当事務所の対応について、差し支えのない範囲でご感想をお聞かせください。下記のQRコードからGoogleマップにご投稿いただけます。任意ですので、ご負担のない範囲でお願いいたします。

引き渡し時に口頭で伝える場合
ありがとうございました。もしお時間があれば、率直なご感想をいただけると今後の参考になります。内容は自由ですし、書かなくても何も問題ありません。

顧問先へメールで送る場合
いつもお世話になっております。当事務所では、ご依頼いただいた皆さまに同じご案内をしております。差し支えなければ、Googleマップにご感想をお寄せいただけますと幸いです。任意のお願いですので、ご遠慮なく見送っていただいて構いません。

文面に入れない言葉

案件の種類、星の数、書いてほしい内容、報酬やサービスの割引。この4つを入れなければ、Googleのポリシーと会の規程のどちらにも触れにくくなります。

口コミが集まらない前提で、何を用意するか

丁寧に案内しても、件数が伸びないことはあります。そのときに件数を買って埋める選択はしないでください。実際に利用していない人の投稿はGoogleのポリシー違反で、削除の対象です。

代わりに用意できる材料は3つあります。

  • プロフィールの情報量。取扱業務、相談の流れ、事務所の写真、営業時間。口コミが少なくても、判断材料は増やせます
  • サイトに載せるお客様の声。書面による同意を取れば、所属会の規程の条件を満たしたうえで掲載できる場合があります。取り方はお客様の声のデザインと載せ方にまとめました
  • 質問に答える記事。相談前に読まれる情報を置いておくと、口コミの代わりに判断材料になります

士業のWeb集客全体での優先順位は士業のWeb集客で整理しています。身に覚えのない投稿への対応は身に覚えのないGoogle口コミへの対処を参照してください。

依頼者に口コミを頼むこと自体が守秘義務違反になりませんか

頼む行為そのものは、事務所が秘密を外部に漏らすことではありません。依頼者本人との非公開のやり取りで案件に触れることも、守秘義務の問題ではありません。注意するのは2つです。第三者に伝わる場で依頼関係や案件に触れないこと、そして投稿内容を指定しないことです。

投稿された口コミを事務所のサイトに載せてもいいですか

サイトに載せた時点で事務所の広告になります。所属会の規程で依頼者や案件の表示に書面の同意を求めている場合があるため、掲載の前に自分の会の規程を確認してください。

お礼として手土産を渡すのは問題ありますか

投稿と引き換えに渡すのであれば、Googleのポリシーが禁じる見返りの提供に当たります。投稿の有無と関係なく渡すものであれば、この問題は生じません。

同業の先生から紹介された方にも頼んでいいですか

実際に依頼を受けた方であれば、他の依頼者と同じ案内をして構いません。紹介元の先生に投稿を頼むことは、利害関係のある立場からの投稿に当たる可能性があります。

補助者や事務員に書いてもらうのは

Googleのポリシーは、雇用関係など利益相反となるつながりに基づく投稿を禁止しています。事務所の関係者による投稿は避けてください。

まとめ

  • 士業でも口コミの依頼自体は禁止されていない。重なるのは守秘義務と所属会の広告規程
  • 守秘義務の条文には正当な事由という留保がある。本人の同意なく依頼関係や案件を公表することは避ける
  • 会の規程が扱うのは事務所が出す広告に加え、第三者が行う規程違反の表示への関与も含む。投稿をサイトに転載すると広告になり、書面の同意が必要になる場合がある
  • 頼むときは案件に触れず、評価も指定せず、完了時に同じ案内を全員へ
  • 件数が伸びない前提で、プロフィールの情報量と同意を取ったお客様の声を用意しておく

個別の表現が自分の会の規程に触れるかどうかは、最終的には所属会への確認が確実です。運用の形を決めるところから手が回らない場合はGoogleマップ集客整備でお手伝いしています。

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