結論から書きます。お客様に口コミの投稿をお願いすること自体は、Googleのポリシーでも景品表示法でも禁止されていません。主な分かれ目は3つで、見返りを渡す、評価や内容を指定する、良い評価をくれそうな人だけに声をかけたり書き手を偽ったりする、のいずれかが混ざったときです。加えて、その場で書くよう求める強要も禁じられています。
- 口コミを依頼していい範囲と、違反になる主な分かれ目
- Googleのポリシーと景品表示法で結論がずれる行為
- 実際に措置命令が出た歯科医院の事例と、違反しない依頼の手順
「お客様に口コミをお願いしたいが、どこからが違反になるのか分からない」という相談をよく受けます。ネットで調べると「依頼はOK」と書いてある記事と「依頼はNG」と書いてある記事の両方が出てきて、判断できないまま止まっている方も多いはずです。
混乱の原因は、口コミ依頼に2つの別々のルールがかかっていることです。1つはGoogleが定めるポリシー、もう1つは景品表示法のステルスマーケティング規制です。この2つは基準が違うので、片方だけを見ると答えを間違えます。
この記事では、よくある12の行為を2つのルールで判定した表を先に置き、そのあとで根拠と、違反せずに口コミを増やす手順を説明します。ルールの内容はGoogleの公式ヘルプ、消費者庁の運用基準と措置命令の公表資料で確認しました(2026年9月16日時点)。
結論:依頼そのものは違反ではない。分かれ目は3つ
お客様に口コミの投稿をお願いすること自体は、どちらのルールでも禁止されていません。Googleは公式ヘルプで、依頼用のリンクやQRコードを作って共有する方法を案内しています。つまり「頼むこと」は想定された使い方です。
違反になるのは、依頼に次の3つのどれかが混ざったときです。あわせて、その場で投稿するよう求める強要も禁じられています。
- 見返りを渡す。割引、クーポン、金券、粗品など
- 評価や内容を指定する。星5を頼む、文案を渡す、書いてほしい言葉を伝える
- 肯定的な口コミだけを選んで集める・書き手を偽る。満足した人にだけ頼む、従業員や家族に書かせる、代行業者に書かせる。実際に利用した人に広く声をかけること自体は問題ありません
お願いすること自体は問題ありません。線を越えるのは主に3つで、見返りで投稿を引き出す、評価や文面を指定する、良い評価をくれそうな人だけに声をかけたり書き手を偽ったりする場合です。加えて、その場で書くよう求める強要も禁じられています。消費者庁のQ&Aも、割引を条件にした場合でも投稿内容の指定が含まれていなければ違反しないとする一方、星5をつけることを条件にすれば事業者が表示の内容を決定していると説明しています。
行為別の判定表:あなたのやり方はどれに当たるか
現場でよくある12の行為を、2つのルールで別々に判定しました。結論がずれる行が3つあるのが、この表のいちばん大事なところです。
| やり方 | Googleのポリシー | 景品表示法(ステマ規制) |
|---|---|---|
| 「よろしければ感想を投稿してください」と声をかける | 問題なし | 問題なし |
| 依頼用のリンクやQRコードを渡す | 問題なし(公式が案内) | 問題なし |
| 領収書や礼状にリンクを載せる | 問題なし(公式が案内) | 問題なし |
| 来店した全員に同じ案内をする | 問題なし | 問題なし |
| 満足していそうな人にだけ声をかける | 違反(肯定的な口コミの選択的な募集) | 内容に関与しなければ当たらない |
| 星5をつけてほしいと頼む | 違反(特定の内容の依頼) | 事業者の表示に当たる |
| 割引・クーポン・金券と引き換えに頼む | 違反(虚偽のエンゲージメント) | 投稿内容のやり取りが一切なければ当たらない場合がある |
| 文案を渡して書いてもらう | 違反 | 事業者の表示に当たる |
| 従業員や家族に書いてもらう | 違反(利害関係のある投稿) | 事業者の表示に当たる |
| その場で書くよう求める | 違反(要求・強要) | 内容に関与しなければ当たらない |
| 代行業者に書いてもらう | 違反 | 事業者の表示に当たる |
| 投稿された口コミの誤記の修正だけを頼む | 公式ヘルプに記載なし | それだけでは事業者の表示にならない |
景品表示法の列は「事業者の表示に当たるか」の判定です。ステマ規制の違反になるのは、事業者の表示に当たり、かつそれが事業者の表示だと一般消費者に判別しにくい場合です。運用基準は、告示の対象を「事業者の表示であるにもかかわらず、第三者の表示のように見えるもの」と説明し、事業者の表示であることが明瞭なものは対象外としています。
表の見方は単純です。どちらか一方でも「違反」なら、やってはいけません。景品表示法で適法でも、Googleのポリシーに違反すれば口コミは削除され、繰り返せばプロフィールにも影響します。逆にGoogleのポリシーを守っていても、景品表示法に触れれば行政処分の対象になります。
Googleのポリシーが禁止していること
Googleはマップ ユーザーの投稿コンテンツに関するポリシーで、事業者側の関与を明確に禁止しています。口コミ依頼に関係するのは次の4つです。
- 見返りの提供。クチコミの投稿や修正、否定的なクチコミの削除と引き換えに、金銭、割引、無料の商品やサービスを提供する行為
- 要求・強要。その場で評価を残すよう、またはクチコミを書くよう要求・強要する行為
- 内容の指定。特定のコンテンツを含めるよう依頼する行為
- 選択的な募集。否定的なクチコミの投稿を妨げたり禁止したり、肯定的なクチコミを選択的に募る行為
加えて、現在や過去の雇用関係、契約関係、競合関係といった利害関係に基づく投稿も禁止です。従業員や取引先に書いてもらう行為はここに当たります。
Googleは依頼用リンクの案内ページにも同じ注意書きを置いています。「クチコミと引き換えに、無料または割引価格で商品やサービスを提供することは虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられている」という書き方です。依頼の道具を配りながら、見返りだけは名指しで禁じていると読むのが正確です。
景品表示法のステマ規制が禁止していること
2023年10月1日から、景品表示法にステルスマーケティング規制が加わりました。正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」という告示(令和5年内閣府告示第19号)で、景品表示法5条3号に位置づけられています。詳しい考え方は消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aにまとまっています。
ここで問われるのは、その口コミが「事業者の表示」に当たるかどうかです。消費者庁の運用基準は、事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合に事業者の表示になるとしたうえで、口コミサイトへの投稿をさせる場合を例に挙げています。
明示的に「こう書いて」と言っていなくても、事業者と投稿者の関係性から、投稿者の自主的な意思による内容とは認められない場合は事業者の表示になります。判断には、やり取りの内容、提供した対価の中身、提供した理由、関係の続き方が総合的に考慮されます。運用基準は対価について「金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益など、対価性を有する一切のもの」と定義しています。食事券も、イベント招待も、対価です。
2つのルールがずれる点:謝礼のクーポン
ここが多くの記事で混ざっている部分です。消費者庁の運用基準は、事業者の表示に「当たらない」例として次のような場合を挙げています。
ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合
つまり景品表示法の側では、謝礼を渡しただけでは直ちに規制対象にはなりません。内容に関与したかどうかが分かれ目です。
一方Googleのポリシーは、引き換えに何かを渡すこと自体を禁止しています。内容に関与したかは問いません。ここに差が生まれます。
「法律的にはセーフだからクーポンを配って口コミを集めよう」は成り立ちません。景品表示法で処分されなくても、Googleのポリシー違反で口コミが消えます。集めた分がまとめて消えれば、手間もコストも無駄になります。
実際に措置命令が出た例:星5と引き換えに5,000円
2025年3月17日、消費者庁は東京都内で歯列矯正を行う歯科診療所を運営する医療法人に対し、景品表示法に基づく措置命令を出しました。
公表資料によると、この診療所は来院者に対し、Googleマップのプロフィール内の口コミ投稿欄に星5と感想を投稿すること、または星5を投稿することを条件に、5,000円分のギフトカードを提供するか、治療費の総額から5,000円を割り引くことを伝えていました。対象になった投稿は9件です。公表資料の別表によると、表示期間は7件が2024年5月15日から、2件が5月29日から、いずれも同年9月11日までとなっています。
消費者庁は、この事業者が「表示内容の決定に関与している」と認定し、投稿による表示は事業者の表示に当たると判断しました。そのうえで、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっていないとして、景品表示法5条3号に違反すると結論づけています。
この事案で見ておくべきは件数の少なさです。9件の口コミで措置命令の対象になりました。「少しだけなら」は通りません。措置命令は違反行為の差止めと再発防止策が命じられ、内容が公表されます。集客のために始めたことが、社名の載った公表資料として残ります。
違反せずに口コミを増やす手順
ここからは実務です。Googleが公式に案内している道具を使い、内容を指定しない形で頼みます。
ビジネスプロフィールの「クチコミを読む」から「クチコミを増やす」を開くと、投稿ページへの直リンクをコピーでき、QRコードもダウンロードできます。
注意点として、QRコードはパソコンのブラウザでしか生成できません。スマホしか使っていない事業者は、ここだけパソコンで作業する必要があります。
Googleが挙げている共有方法は、領収書に含める、感謝のメールに含める、チャットのやり取りの最後に添える、QRコードを印刷して店内に掲示する、の4つです。
掲示や同封なら、渡す相手を選びません。相手を選ばないことが、そのまま「選択的な募集」の回避になります。
「率直なご感想をお聞かせください」「気づいた点があれば書いていただけると助かります」「投稿は任意ですので、無理のない範囲で」。この3つの型で足ります。
避ける言い方は「星5をお願いします」「高評価で」「良かった点を書いてください」です。評価も、書く方向も、こちらが決めてはいけません。
返信にはオーナー確認が必要です。返信は企業からの返信として表示され、担当者の個人名は出ません。公開されると投稿者本人に通知が届きます。
返信はGoogleの審査を通ってから表示されます。通常は10分以内ですが、最長で30日ほどかかることがあります。すぐ出ないからといって書き直しを繰り返さないでください。
投稿された口コミがポリシーに違反していると思う場合は、削除を頼むのではなく報告の手続きを使います。削除の対象はポリシーに違反する口コミだけで、審査には通常数日かかり、結果に納得できない場合は1回だけ再審査を求められます。
依頼の前にプロフィール側が整っていないと、せっかく見に来た人が離れます。写真や営業時間、サービス内容の整え方はMEO対策は自分でできる?にまとめました。
士業・クリニックは、もう1つルールが重なる
ここまでは全業種に共通する話です。士業と医療機関には、業界固有の規程が上乗せされます。
士業:同意がなければ依頼者に触れられない
司法書士、税理士、社会保険労務士、行政書士には、それぞれの法律に守秘義務が定められています。たとえば司法書士法24条は「正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない」と定めます。
さらに広告の規程があります。大阪司法書士会の広告に関する規則は、依頼者を表示した広告と、取り扱った案件を表示した広告を、依頼者の文書による同意がある場合を除いて禁止しています。広告の規程は所属する会ごとに定められているため、実際の判断は自分の所属会の規程で確認してください。税理士の業務の広告に関する細則も、委嘱者の氏名や現在・過去の事案の表示を禁じ、書面による同意がある場合だけ除いています。
つまり士業は、所属会の規程で依頼者や案件の表示に書面の同意が求められる場合、その同意がない限り「誰が依頼者か」を自分からは明かせません。守秘義務には「正当な事由がある場合」という例外がありますが、集客のための公表がこれに当たるとは通常考えられません。依頼の声かけも返信も、この前提で組む必要があります。士業のWeb集客全体の優先順位は士業のWeb集客で解説しています。
クリニック:依頼の仕方によって「広告」になる
医療広告ガイドラインのQ&Aは、医療機関が患者や家族に有償無償を問わず肯定的な体験談の投稿を依頼した場合、その体験談には誘引性が生じるとしています。誘引性があれば広告規制の対象になり、治療の内容や効果に関する体験談は広告禁止事項なので掲載できません。
反対に、医療機関の影響を受けずに患者が行う推薦にとどまる限り、誘引性は生じません。第三者の口コミサイトへの掲載も、医療機関による掲載の依頼や費用負担などの便宜供与による誘引性が認められなければ、広告には当たらないとされています。ただし頼まなければ安全、とは限りません。同じQ&Aは、口コミサイトの運営者が体験談の内容を改編したり、否定的な体験談を削除したり、肯定的な体験談を上部に優先表示したりして医療機関に有利に編集している場合、それが医療機関の依頼によるものであれば誘引性が生じるとしています。依頼によるものでなくても、医療機関が事後的にそのように編集されたサイトの運営費を負担する場合は同様です。なお、否定的な体験談の削除については、その体験談が名誉毀損等の不法行為に当たる場合は除かれます。
- 口コミのお礼を言うだけでも違反になりますか
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なりません。禁止されているのは、投稿と引き換えに金銭や割引などの見返りを提供することです。言葉でお礼を伝えることは対価の提供に当たりません。返信でお礼を書くことも問題ありません。
- 投稿してくれた人に、後からお礼の品を渡すのはどうですか
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Googleのポリシーでは避けるべきです。渡す時期が後でも、投稿に対して物を渡していれば引き換えと見なされます。感謝を形にしたい場合は、投稿の有無と関係なく全員に配るサービスにしてください。
- 従業員や家族に書いてもらうのは違反ですか
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違反です。Googleのポリシーは、雇用関係や契約関係など利害が絡む立場からの投稿を禁止しています。景品表示法でも、事業者が内容の決定に関与した表示として扱われます。
- すでに特典を配って口コミを集めてしまいました
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まず特典と引き換えの依頼を止めてください。そのうえで、案内文やPOP、メールのテンプレートから見返りに関する記載を削除し、いつ何を配ったかの記録を残します。投稿者に削除を強要すると別の問題を生むため、対応に迷う場合は弁護士に相談してください。
- 悪い口コミを書かないでほしいと頼むのはどうですか
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Googleのポリシー違反です。否定的なクチコミの投稿を妨げる行為と、肯定的なクチコミを選択的に募る行為は、どちらも明確に禁止されています。事実と違う内容やポリシーに違反する内容であれば、削除を頼むのではなく報告の手続きを使います。
まとめ
- 口コミの依頼自体は違反ではない。Googleは依頼用リンクとQRコードを公式に案内している
- 主な分かれ目は3つ。見返りを渡す、評価や内容を指定する、良い評価をくれそうな人だけに声をかけるか書き手を偽る。加えて、その場で書くよう求める強要も禁止
- Googleのポリシーと景品表示法は基準が違う。謝礼のクーポンは法律上は条件次第でも、Googleでは禁止
- 星5と引き換えに5,000円を渡した歯科医院は、9件の口コミで措置命令を受けた
- 士業は守秘義務に加えて所属会の広告規程を確認する。依頼者や案件を広告に出すには書面の同意が必要になる場合がある。クリニックは依頼の仕方によって口コミが広告になる
口コミは、集め方を間違えると資産ではなく負債になります。内容を指定せず、見返りを渡さず、全員に同じ案内をする。この形を基本にして、投稿の強要や、従業員など利害関係のある人への依頼も避ければ、依頼のやり方が原因でポリシーに触れるリスクは抑えられます。ただし投稿された口コミが必ず表示され続けるわけではありません。実体験に基づかない内容や、Googleの判定によって表示されなくなる場合は別にあります。
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